斎藤工 / 俳優・映画監督
Hong Kong
香港
「自分が出来ることを問われた気がした」
斎藤工が四半世紀の時を経て再訪した香港
斎藤工 / 俳優・映画監督
※写真はGoogle Pixelで撮影しています。
近年は俳優業だけでなく映画監督としても活躍している斎藤工。幼い頃から映画が身近な存在だった彼が2度目のアナザースカイとして選んだのは香港。香港がイギリスから中国に返還されて間もない時期、モデルとして活動をしていた16歳の斎藤さんは初めてこの地を訪れた。西洋とアジアの文化が入り混じった独特な色彩、香り、自由なカルチャーに浸かり、その時に得たきっかけによって俳優への道が開けたと語る。それから20年以上の月日が流れ、再訪した香港は、当時の印象とは異なる空気を感じ取ったそう。映画人として再び帰ってきたこの地で、今の香港を目に焼き付けます。JOUR
NEY
Nathan road
時代と共に変動した
香港の目抜き通り
香港の尖沙咀(チムサーチョイ)から、界限街(バウンダリーストリート)までをつなぐ大通り。一昔前までは道路にせり出した巨大なネオン看板が多く設置されており、香港名物となっていたが、規制や老朽化により次々と撤去されてしまったそう。今回は斎藤さんが初めて乗るというオープントップバスで巡る。100万ドルの夜景と言われていた香港は今でも変わらず、ビル明かりが香港の夜の街を眩しく照らしていた。
Nathan road
ネイザンロード
Sing Kee
当時わずかな所持金で
訪れた屋台
高層ビルやオフィスの片隅に屋台や老朽化した建物、狭い路地や坂道が集まるエリア。斎藤さんは当時、生活費もままならない所持金でこの場所にある屋台をよく訪れたという。極貧旅の秘訣は、ご馳走してくれる人を見極める嗅覚、心の声を半分漏らして、表情で伝えることだと語る。
Sing Kee
盛記
63 號 Stanley St, Central, Hong Kong
Chungking Mansion
バックパッカーの聖地
重慶大厦(チョンキンマンション)
ゲストハウス、両替所、飲食店などあらゆる施設が混在している複合ビル。斎藤さんは初訪問時、このディープな世界に魅了された。影響を受けたのは沢木耕太郎の小説「深夜特急」。『ある朝、目を覚ました時、これはもうぐずぐずしてはいられない、と思ってしまったのだ』という書き出しを今でも覚えている。
Chungking Mansion
重慶大厦(チョンキンマンション)
Chungking Mansion, 36-44 Nathan Rd, Tsim Sha Tsui, Hong Kong
Filming location for "Chungking Express"
『恋する惑星』にて
主人公が出逢った場所
香港を舞台に若者たちのすれ違う恋模様をスタイリッシュに描いた群像ラブストーリー映画『恋する惑星』。出逢いが交差する重要なシーンはこの交差点(現セブンイレブン)で撮影された。映画を観た斎藤さんは、この世界でチャレンジしようと人生の決断をしたという。
Filming location for "Chungking Express"
映画『恋する惑星』のロケ地
2-3 Lan Kwai Fong, Central, Hong Kong
Blue Lotus Gallery
デビューのきっかけをくれた
写真家との再会
モデル活動時代に知り合い、宣材写真を撮ってもらったウィン・シャさんと、香港のカルチャーを色濃く反映する企画展を行うギャラリーにて再会。彼が繋いでくれたきっかけで俳優デビュー作品とも出会ったという。「変化する時代の中で受け継がれてきた精神がある。香港人は生きることにすごくフレキシブルだ」とウィンさんは静かに語った。
Blue Lotus Gallery
ブルーロータスギャラリー
28 Pound Ln, Sheung Wan, Hong Kong
Causeway Bay
活気にあふれた
香港における商業の中心地
世界トップクラスの地価を誇る一等地。レストランから屋台などの飲食店や、高級モール、デパートなど、数多くのショップが点在している。斎藤さんが訪れた当時は日本のカルチャーが大人気で、有名アイドルの写真を販売するショップなどが多く並んでいたそう。香港のカルチャーに魅せられて訪れた斎藤さんと、日本の文化へのアンテナが強い現地人たちの交流が行われ、各国の想いの交差点になっていたという。
Causeway Bay
銅鑼湾(コーズウェイ ベイ)
Causeway Bay, Hong Kong
香港は時代とともに変化し続けている。
街の姿形にそれほど差異は感じなかった。
けれど、人々の声無き声を今回の旅で強く感じたという。
今の自分に何ができるかわからない…
それでも自身が関わる映画は物語を残し、想いを遠くに届けることができる。
過去と現在、未来の点はより強い線で繋がった。この旅で持ち帰るものは大きい。
今回の経験がきっとこれからの作品に滲み出るだろう。
JOUR
NEY
斎藤工 (さいとう たくみ)
1981年8月22日 生まれ、東京都出身。2001年に俳優デビュー。主な出演映画は『昼顔』(17)、『8日で死んだ怪獣の12日の物語』(20)、『孤狼の血 LEVEL2』(21)、『シン・ウルトラマン』など。現在公開中の竹中直人監督『零落』では主人公の漫画家を演じる。俳優業の傍らで20代から映像製作にも積極的に携わり、齊藤工名義での初長編監督作『blank13』(18)では国内外の映画祭で8冠を獲得。2023年9月には監督長編最新作『スイート・マイホーム』の公開が控える。劇場体験が難しい被災地や途上国の子供たちに映画を届ける移動映画館「cinéma bird」の主宰や全国のミニシアターを俳優主導で支援するプラットフォーム「ミニシアターパーク」を立ち上げるなどマルチに活動している。